「やっとお義母さんが死んでくれる…!!」七十歳死亡法案、可決。の衝撃
総合評価
★★★★★
七十歳死亡法案、可決
垣谷美雨
この本をおすすめな人
- 結婚している方
- 親や義理親の介護をしている方
- 昨今の少子高齢化が心配な方
あらすじ
高齢者が国民の三割を超え、破綻寸前の日本政府は「七十歳死亡法案」を強行採決。
施行まで二年、宝田東洋子は喜びを噛み締めていた。
我侭放題の義母の介護に追われた十五年間。
能天気な夫、引きこもりの息子、無関心な娘とみな勝手ばかり。
やっとお義母さんが死んでくれる。
東洋子の心に黒いさざ波が立ち始めて…。
すぐそこに迫る現実を描く衝撃作!
内容(「BOOK」データベースより)
良い点
- 架空の設定とはいえ現実の問題を取り上げており秀逸
- 少子高齢化について考えさせられる
- それぞれの世代の言い分や生き方を追体験できる
悪い点
- 内容が極端なところがある
- 読み手の年齢によっては響かないかも
感想
ああ、この「七十歳死亡法案、可決」が現実ならばどれほどの人が救われるだろう。
しかしその救われる人の数はこの法案が施行されて命を落とす70歳以上の高齢者よりもはるかに少ないのだろう。
なぜなら少子高齢化で大きな声にはならないから。
だから現実になることはない。
というかそもそも人道的観点でみてもあり得ない。
ファンタジーで夢物語。
だからこそ物語に救いを求めるのだ。
小説や寓話などはすべてそうではないか。
この本を読んで救われる気持ちになる人、スカッとした気持ちになる人は
「現状とてもつらい状況にある人」
だと思う。
「七十歳死亡法案、可決」
このタイトルだけで私もスカッとした。
私自身が、義父と同居していた時に主人公の宝田東洋子(たからだとよこ)と同じ気持ちになった経験があるから。
東洋子はワガママな義母との同居と介護に疲れはて七十歳死亡法案の施行される「あと2年後」までうんざりした気持ちになっている。
待てない待てない。
自分だってどんどん年を取っていくのに「たったあと2年」とは思えない。
「2年後じゃなく今すぐ死んで」
そんな気持ちになるのだ。
こんな状況の中で
介護職に就いている(他に職が無かったから!)娘の桃佳(ももか)は同僚でヤングケアラーの若者に恋している。
転職に失敗して引きこもりニートになっている息子の正樹(まさき)はこのままの生活がいつまで続けられるかと内心は恐怖で仕方ない。
そして、死亡法案が決まり人生あとわずかということでやりたいことをやるために退職して妻を置いて世界一周旅行へ出かける夫が出てくる。
それぞれの物語が同時進行で進んでいく。
そして、それぞれの言い分をぶつけて来られ東洋子はますます嫌になってしまう。
そしてなんと義母や家族を置いて、家出してしまうのだ!
家出した東洋子は専業主婦をしていたため生活力に自身がない。
片や残された、家事介護をしたことのない男たち。
当たり前のように東洋子に介護してもらっていた義母。
それぞれ皆どうなってしまったのか!?
それは読んでからのお楽しみに…
誰かひとりに「ケアする立場」を押しつけていてはうまく行くものもいかなくなる。
それに気がつけるかどうか。
読後感はかなりスッキリ!!
ということだけお伝えしておきます(^^)
この本の中で印象的だったのは
老人と若者の対比。
こんなやり取りが出てきました。
老人「我々は若い時には苦労してきた。それで今はこうして楽に暮らせている。今の若者も老後を心配することはない。なんとかなるもんですよ。人生なんて」
若者「老人にばかり税金を使う時代を早く終わらせてほしい。若者の薄給の中から豊かな老人のために年金を払うのは納得いかない」
優遇されている老人世代と搾取される若者世代の意識の差は大きい。
物語として対比を面白おかしく描いているが、現実でもまったく同じような考えがあり世代間で噛み合わないのだ。
そんなことを考えさせられながら、あっという間に読み進めることができました。
そして、この本をもっと多くの方に知っていただきたいと感じました。
ぜひ映像化、映画化していただきたい。
そんな風に思える作品でした。
総合評価
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★★★★★
七十歳死亡法案、可決の類似作品
七十歳死亡法案、可決と 似ているなと思った作品をご紹介
〇ミシンと金魚
おもしろい語り口調で高齢問題を描いた作品。
こちらもとても引き込まれました…
現役ケアマネージャーが執筆したということで内容がとてもリアル。
おすすめです!!
この作品が好きな人にオススメの本はこちら
「七十歳死亡法案、可決」が好きな人におすすめの本はこちらです
〇姑の遺品整理は、迷惑です
亡くなったお姑さんの自宅はとんでもなく物が溜め込まれており、片づけに信じられないくらいの苦労をさせられた!
それだけではなくなにやらサスペンスの要素もあって…
とにかくこちらもグイグイ引き込まれてあっという間に読み終えてしまいました。
感想文も書いています